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足のむくみの正体は細胞の隙間の水分 足上げ、歩行、塩分減が効果的
情報誌けあ・ふるVOL.112(2022/7)掲載

国立研究開発法人
国立長寿医療研究センター
血管外科部長

藤城 健 先生

 足のむくみは誰でも経験する症状で、特に高齢者ではよくみられます。軽症から重症までその原因は多岐にわたり、ときには重大な病気が隠れていることもあります。国立長寿医療研究センターで「足の腫れむくみ外来」を担当している血管外科部長の藤城健先生に、足のむくみの原因と予防・対処法をお聞きしました。

足のむくみの3分の2は原因不詳

 足のむくみを起こす原因は多様です。国立長寿医療研究センターの「足の腫れむくみ外来」では、様々なタイプの足のむくみを、専門的、総合的に診断・治療しています。
 藤城先生は「足のむくみが起こる原因には、全身性の原因と局所性の原因があります(表)。全身性の原因の場合には、心不全に代表されるように、全身の血液循環が悪くなって足にたまった余分な水分を心臓に戻せなくなっています。局所的な原因では下肢深部静脈血栓症などで、足の特定の部位で血流が悪くなって水分が戻せなくなります。両足に同じようにむくみがある場合は全身性の原が、左右の足で差がはっきりある場合には局所的な原因が考えられます」と言います。
 藤城先生が専門外来で診る患者のうち、詳細な検査などで原因が診断できるのは約3分の1で、そのうちで一番多い原因は、心不全または心負荷(心不全には至らないが心臓の機能が低下した状態)だそうです。心不全は悪化すれば命にもかかわる病気であり、症状に合わせた専門治療が行われます。藤城先生によれば、実は、同専門外来を受診する患者の3分の2は、いろいろ検査をしても原因が特定できない足のむくみなのだそうです。

体内の水分が重力で足にたまる

 藤城先生は「むくみという症状は、細胞と細胞の隙間などに水分がたまった状態です」と、以下のように説明します。
 細胞の外にたまった水分は重力で下へ下がってきます。若くても下がってくるのですが、高齢になると組織がだんだん緩んでくるので、水分が下がりやくなります。体の一番下に足があるので、足がむくむのです。足首や足の甲とその周囲が一番むくみがひどくなりやすい部位です。足が重いとか踵がひどく腫れて靴が履けないという状態にもなります。「年を取るとそういうむくみが起こりやすくなると考えています」(藤城先生)。 また、じっと立っていたり、座っていると、足はむくみやすくなります。若い人でも立ち仕事の人やデスクワークの人によくみられます。「高齢の方では、一日中座りっぱなしということも多く、特に車いすを使っている方の大半は足にむくみがあるので、ていねいなケアが必要です」と藤城先生は注意をうながします。

足を動かせば水分が戻る ベッドの足上げ機能も効果的

 むくみの原因となっている病気が診断されれば、その病気の治療が優先されます。一方、むくみという症状を軽減するにはいくつか対処法があります。 まず、なるべく運動をして足を動かすということです。足を動かすと足に滞留していた血液が筋肉のポンプ作用で心臓のほうへ戻っていくので、足に水分がたまりにくい状態になります。「運動はできる範囲で行ってください。少し歩く程度でも十分効果があります」(藤城先生)。
 もう一つは足を高く上げるという方法です。夜寝るときに、枕やバスタオルなどをはさんで、少し足を高く上げて寝ます。「昼間ずっと車いすで座ったきりだと足がむくみやすいので、昼間にもちょっとベッドで横になって足を上げる時間をつくるとよいでしょう。最近はベッドもいろいろな機能が付いていて、医療・介護用だけでなく、一般向けのベッドでも足上げができるものもあるので、そういう機能を使うと効果的だと思います」(藤城先生)。

塩分控えめでバランスよい食事を

 そしてもう一つ大事なのが、栄養と塩分摂取の注意です。
 高齢の方は塩分を取る量が多くなりがちです。味覚がだんだん鈍くなってくると、どうしても濃い味が好みになります。塩分をたくさん取ると、塩分が水を引いてしまうのでむくみやすくなります。
 また、食が細くなって低栄養になると、血管から水分がもれやすくなり、むくみの原因になります。「たんぱく質をはじめ、栄養をバランスよくしっかり摂取することもむくみの対処には大事です」(藤城先生)。

むくみが引かない場合は受診を

 むくみが特にひどい場合について藤城先生は、「むくみがひどい人には圧迫ストッキングをお薦めする場合もあります。圧迫ストッキングは強い弾力性で圧迫してむくみを軽減します。圧迫療法に使う医療用ストッキングで、正しく着脱できるように指導を受ける必要があります。また、尿の量を増やす薬を服用して体内の余分な水分を減らすとむくみを軽減する効果がある場合もあります。市販薬もありますが、本来、高血圧や腎臓病などの治療薬であり、頻尿になるなどの問題もあるので、かかりつけ医と相談してください」と話しています。
 「足のむくみは、多くの場合はセルフケアである程度軽減します。もしむくみがだんだんひどくなったり、ひどいむくみがなかなか引かない場合には、専門外来、あるいは循環器内科などで診察を受けてください」と藤城先生はアドバイスしています。