知る・学ぶ

医療・介護トピックス

医療
花粉皮膚炎の最新知見 予防の基本は花粉から肌を守る
情報誌けあ・ふるVOL.111(2022/4)掲載

東京医科歯科大学 名誉教授

横関 博雄 先生

 スギ花粉を筆頭に、花粉が飛散する時期に顔や首など露出している皮膚に赤いかぶれが出るのは「花粉皮膚炎」かもしれません。花粉皮膚炎は花粉症に伴う皮膚症状とは発症のメカニズムが少し違うことが分かってきました。花粉皮膚炎の特徴や予防法について東京医科歯科大学名誉教授の横関博雄先生にお聞きしました。

特定の季節にだけ発症 典型的なスギ花粉皮膚炎

 花粉の季節になると悩まされる花粉症の主な症状は鼻みず、鼻づまりといった鼻症状や眼の充血やかゆみなどの眼症状です。そのほかに全身症状として、のどや耳に症状が出たり、喘息症状、下痢などの消化器症状が出ることもあります。さらに、花粉は花粉皮膚炎を起こすことがあります。
 花粉皮膚炎の臨床的な特徴は、まず特定の花粉の季節にだけ生じる皮膚炎だということです。横関先生は「花粉症と同様にいろいろな種類の花粉が花粉皮膚炎の原因となりますが、典型的なのはスギ花粉皮膚炎で、春先に最も多く発症します。スギの花は晩秋にも咲くことがあるので、11月、12月も要注意です」と言います。
 花粉皮膚炎の皮膚症状について横関先生は「じんま疹のように赤く腫れる浮腫性の紅斑ができます。赤味は非常に強いのですが、湿疹のようにぶつぶつができたり水ぶくれになったりすることはあまりありません。こうした紅斑が顔、眼の周り、首などの露出した部位に発症しやすいのが特徴です」と説明します(表1)。

花粉皮膚炎は遅発型 経皮感作による接触性皮膚炎

 花粉症による鼻症状や眼症状の有無や程度と花粉皮膚炎の発症は必ずしも一致しないことがあります。花粉症の症状がなくても花粉皮膚炎を起こしている例もあることなどから、花粉皮膚炎は花粉症とは発症のメカニズムが少し違うことが分かってきました。
 花粉症による眼のかゆみやくしゃみなどの症状は花粉に曝露するとすぐに表れますが、花粉皮膚炎は花粉に接してから紅斑が出るまでに時間がかかり、いったん赤くなるとなかなか消えません。
 「花粉皮膚炎の診断には、花粉の抗原を含む試験液を皮膚に少量付けて反応を調べる皮膚アレルギー検査(パッチテスト)を行います。花粉症で陽性の場合は数分で赤く膨疹が表れ、しばらくして消えていきますが、花粉皮膚炎の場合は膨疹が出てくるまでに48時間程度かかります。こうしたことから花粉皮膚炎は、吸入した花粉抗原で即時に引き起こされる花粉症の鼻症状などとは異なり、皮膚に付着して侵入した花粉抗原の刺激によって少し時間をかけて発症する接触性皮膚炎だと言えるでしょう」(横関先生)。

紛らわしい症状との鑑別 早めに専門医の受診を

 花粉皮膚炎の診断では、皮膚症状の部位と症状を診ていきますが、横関先生は「眼の周りや頬の発赤といった症状が表れた場合には、鑑別が難しい症状もあります。素人判断はせず、早めに皮膚科の専門医を受診するようにしてください」と言います。鑑別が難しい例として横関先生は、毛染め剤や点眼薬によるアレルギー性接触皮膚炎、アイライナーや美容液による接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、光線過敏症、接触じんま疹、黄砂による皮膚炎などを挙げます(表2)。
 パッチテストなどによって原因が花粉抗原と特定されれば花粉皮膚炎と診断されます。皮膚の表面には角質層などのバリア機能があって、本来は花粉などが侵入するのを防いでいます。しかし、皮膚のバリアが傷ついていると隙間から抗原が皮膚組織に入ってしまいます。横関先生によれば、「花粉皮膚炎の約9割はスギ花粉が原因です。これはスギ花粉は抗原粒子が小さく、バリアの隙間から入りやすいからと考えられます。秋の花粉症の原因として挙げられるヨモギなどの花粉は抗原粒子が比較的大きいため花粉皮膚炎を起こしにくいようです」とのことです。
 花粉皮膚炎の治療は花粉症の治療と同様で、抗アレルギー薬を服用します。「さらに皮膚の局所には非常に強い炎症が起きているので中程度の強さのステロイド外用薬などを使って炎症を抑えていきます。傷ついた皮膚のバリアを修復するスキンケアも重要です」(横関先生)。

花粉に肌を曝露しないこと スキンケアでバリア機能を保持

 花粉皮膚炎の予防には、花粉への曝露を避けることが一番です。花粉症の予防対策と同様に、外出時には帽子やマスク、眼鏡(ゴーグル)などで花粉が直接皮膚に接触すること避けるようにします。帰宅後はシャワーなどで抗原を洗い流した上で、保湿剤などでスキンケアをします。
 「皮膚のバリア機能が働けば花粉抗原の侵入を防げるので、顔や首のスキンケアを行って皮膚のバリア機能を保つことが非常に大事です。特に女性では、化粧品かぶれや化粧品落としなどで顔のバリアが傷ついていることが多いので注意が必要です。また、アトピー性皮膚炎などバリア障害がある場合も花粉抗原によって皮膚炎を増悪しやすくなりますので、適切な治療を受けて十分なスキンケアをしてください」とアドバイスしています。