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人工甘味料の特長を知って賢く利用
情報誌けあ・ふるVOL.103(2020/5) 掲載

金沢医科大学
衛生学准教授

櫻井 勝 先生

減量に効果あり、ただし常用は糖尿病のリスクも

 低カロリーやカロリーゼロと銘打った食品があふれています。これらには砂糖の代わりに人工甘味料や天然甘味料などが使われています。人工甘味料は砂糖より甘さが強く、少量の添加ですむため低カロリーで、血糖値の上昇も抑制できます。しかし、近年、人工甘味料が糖の代謝にいろいろな影響をおよぼしていることも分かってきました。金沢医科大学衛生学准教授の櫻井勝先生は人工甘味料を常用すると糖尿病の発症リスクが高くなる可能性があると注意を促します。櫻井先生に人工甘味料の賢い利用法をお聞きしました。

ダイエット食品に多用される人工甘味料

 人工甘味料は化学的に作られた甘味料です。日本で主に食品に使われているものは「アスパルテーム」「アセスルファムリウム(アセスルファムK)」「スクラロース」です。アスパルテームの甘味度は砂糖の200倍、アセスルファムカリウムも200倍、スクラロースは600倍にもなります(表)。
 「これらの人工甘味料は、苦みが少なく、甘みの持続が長く、さらに熱に安定している、水に溶けやすいなどの優れた特長があり、たいへん多くの食品に利用されています」と櫻井先生は言います。
 清涼飲料水やスイーツ、お菓子などで低カロリーやカロリーゼロをうたった“ダイエット食品”の多くは、甘味を付けるのに砂糖ではなく人工甘味料などの非糖質系甘味料を使っています。人工甘味料は砂糖に比べて強い甘みを持つのでごく少量の使用量で甘くできるため、摂取カロリーが少なく、効率よくカロリー制限ができるとされています。
 櫻井先生は「人工甘味料を使ったダイエット清涼飲料水は、上手に使うと減量効果や肥満を抑える効果が期待されます。計算上では、毎日清涼飲料水500㎖を飲む人がダイエット清涼飲料水に替えると、1カ月で体重約1キロ分の摂取カロリーを減らすことができます」と言います。

人工甘味料は 血糖値を上昇させない

 砂糖や糖質食品を摂取すると、消化管でブドウ糖などに分解・吸収されて血糖値が上昇します。血糖値が上がると膵臓からインスリンが分泌され、血液中のブドウ糖が肝臓や筋肉に取り込まれて血糖値は元に戻ります。しかし、ブドウ糖の量が多いと余分なブドウ糖は脂肪細胞にも取り込まれ、脂肪として蓄積し、肥満の原因になります。同時に、必要とされるインスリンの分泌量が増加して膵臓への負担が増え、糖尿病を発症しやすくなります。
 一方、人工甘味料にはブドウ糖が含まれないため、脂肪細胞に脂肪が溜まることはありません。また、摂取しても血糖値は上昇せず、インスリンの分泌を促しませんから、糖尿病の予防にもなるともいわれてきました。「ところが、2011年頃から、米国などでダイエット清涼飲料水をとりすぎると糖尿病を発症するリスクが高まるという研究が発表されています」と櫻井先生は指摘します。
 2012年には米国の糖尿病学会と心臓病学会の専門家チームが、砂糖の代わりに人工甘味料を使うと肥満や糖尿病の予防、治療に有用な可能性があるとする声明を発表しました。「その声明の中で専門家チームは、人工甘味料が糖の代謝におよぼす影響についてはまだ十分に分かっていないとも指摘しました。そこで、私たちは人工甘味料を使ったダイエット清涼飲料水の摂取量と糖尿病発症との関連を調べました」(櫻井先生)。

ダイエット清涼飲料水 常用は糖尿病のリスクに

 櫻井先生たちの研究グループは富山県の大手製造事業者の従業員を対象に栄養調査を行い、ダイエット清涼飲料水の習慣的な摂取量を調査しました。
 このうち糖尿病のない35〜55歳の男性2037人ついて、毎年の健康診断の結果を追跡したところ、調査期間の7年間に糖尿病の発症が確認された人が170人いました。そこで糖尿病を発症した人と発症しなかった人では、ダイエット清涼飲料水の摂取量がどれほど影響があったのか関連を分析しました。その結果、週に1カップ(237ミリリットル)以上飲む人は、飲まない人に比べて糖尿病発症の危険度が1・7倍も高いことが分かったのです。
 「この調査では危険度が1・7倍という結果が出ましたが、もともと糖尿病になりやすい肥満者がダイエット清涼飲料水を好んで飲んでいる可能性があります。また、生活習慣の影響も考えないといけません」と櫻井先生は語り、さらなる研究の必要性を指摘します。

甘味が食べ過ぎの誘因か 栄養・味のバランス大切に

 人工甘味料が糖尿病のリスクを高めるメカニズムは少しずつ明らかになりつつあります。
 櫻井先生によれば、「まず、人工甘味料の甘みが食欲を増進させたり、ダイエット効果を過信することで結果的に摂取カロリーが増えるという心理的な要因が指摘されています。また、舌で甘みを感じると脳は血糖値の上昇を予測してインスリンを出す準備をするのですが、人工甘味料では甘みの信号は来るものの、血糖値が上がらないので脳が混乱し、食欲を刺激して食べ過ぎになる可能性もあるようです」とのことです。
 「まだこれから研究しなければ分からないことも多いのですが、安易に人工甘味料を常用摂取することがないように。人工甘味料の特長を知って利用しましょう。食事全体のカロリーや栄養・味のバランスを大事にすることが第一です」と櫻井先生は話しています。