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見直される秋の味覚サツマイモ
情報誌けあ・ふるVOL.101(2019/10) 掲載

東京家政学院大学
人間栄養学部 人間栄養学科 教授

林  一也 先生

品種改良で高齢者に優しい食感も

 日本人に身近な食材であるサツマイモの良さが再認識されています。元来サツマイモは、でんぷんが豊富で手軽にエネルギーを取るには都合よく、しかもビタミンCや食物繊維など多くの栄養成分を含んでいて、タンパク質と脂肪を補えば理想的な食品になり、準完全栄養食品とされてきました。近年さらに品種改良が進んで、特定の栄養成分が強化されたものや食感が好まれるものなど様々な新品種も登場しています。最新のサツマイモ事情を東京家政学院大学人間栄養学部人間栄養学科教授の林一也先生にお聞きしました。

身近で栄養豊富な食品 ごはんの10倍の食物繊維

 秋の味覚の代表格であるサツマイモの歴史は古く、ペルーの原産であったサツマイモとジャガイモを16世紀のはじめにコロンブスがヨーロッパに持ち帰ったことを契機に世界に広がったとされています。日本には17世紀頃に中国を経由して入って来ました。
 近年になって、ビタミンやミネラルなどの栄養素を含んだ機能性の高さからサツマイモの良さが再認識されて、品種改良にも磨きがかかってきました。
 表(添付資料参照)はサツマイモの主な栄養成分をごはん(精白米)と比較したものです。ごはんよりもエネルギーが少ないのですが、食物繊維がごはんの10倍以上も含まれていることが分かります。
 食物繊維の成分は水に不溶性のセルロース、ヘミセルロースと水溶性のペクチンなどですが、整腸作用によってお通じを改善する働きが知られています。サツマイモにはこの食物繊維がバランス良く含まれています。

ビタミンCは加熱してもでんぷんに守られて安定

 ごはんにはビタミンCはほとんど含まれていません。でもサツマイモにはたくさん含まれています。中サイズのサツマイモ1 個( 約200g)に含まれるビタミンCはレモン2個分(40㎎)以上に相当します。しかも注目されるのはその安定性です。
 「サツマイモのビタミンCはほかのイモ類と同様に調理しても壊れません。普通の野菜は茹でてしまうとビタミンCがなくなってしまいますが、イモ類のビタミンCはでんぷんに守られているために安定で、蒸したり、焼いたりしても壊れにくいという特徴があります。サツマイモにはビタミンEが非常に多い品種もあって、活性酸素の有害作用を抑える抗酸化ビタミンを効率良く摂取することが可能です」(林先生)。
 サツマイモはミネラルも非常に豊富です。「カリウムにはナトリウム排泄促進効果がありますから、血圧が高めで減塩に苦労されている方には都合が良い食品と言うことができます。カルシウムも取れるので、骨粗鬆症が心配な方にもお勧めできます」と林先生は説明します。
 抗酸化色素のカロテンを含む食材としてもサツマイモは注目されていますが、カロテンの量は品種によって大きな差があります。もしカロテンを多く取りたいと思った場合は、オレンジ色の品種が目印になります。紫イモにはブルーベリーに含まれているアントシアニンが含まれています。サツマイモに特有のカロテン、アントシアニンがあることも分かってきて、それらの機能についての研究が最近活発になっています。

じっくり加熱が甘さを引き出す総菜には瞬間加熱で甘さを調節

 サツマイモは加熱すると甘くなることが知られています。これはサツマイモのでんぷんが60 〜75℃で糊化し、そこにβアミラーゼが作用してでんぷんが糖化して麦芽糖(マルトース)に変わるためです。「比較的低い温度で長い時間をかけて加熱するとより甘さが引き立ちます。石焼きイモや壺焼きイモは遠赤外線を利用してじっくりと加熱しているので甘くておいしい焼きイモができるのです」と林先生。家庭では濡らしたキッチンペーバーかラップにくるんで、電子レンジを100〜200ワットの弱加熱モードに設定してゆっくり加熱すると甘いイモになるそうです。
 一方で、おやつや菓子材料として魅力となるこの甘さのためにサツマイモは総菜には利用しにくい面があります。林先生によれば、糖化に働くβアミラーゼは80℃を超えると働かないので、電子レンジの出力を1000〜1500ワットに設定して一気に加熱するとあまり甘くならないそうです。こうするとサラダなどにも使いやすい食材になります。

ホクホクよりしっとりへ 様々な機能を備える新品種

 準完全栄養食品としての栄養成分はそのままに、様々な機能性が付加された新品種が次々と生まれており、栽培される品種もいろいろ変遷があるようです。林先生は「例えば以前は焼きイモでもホクホクした食感の品種が好まれていましたが、最近は水気が多くてしっとりとした食感の品種が好まれる傾向にあります。品種改良もその方向へ向かっています」といいます。その背景には、最近の若い人はよく噛まないで食べて咀嚼の回数が少ないので唾液の出方がよくないためホクホクタイプは苦手ということもあるようです。また、唾液が少なく口の中が乾燥しがちな高齢者にとってもしっとりタイプが食べやすいようです。林先生は「栄養面をはじめ、食感や見た目、さらには生活習慣病予防などの機能性でも、サツマイモの良さが見直されています。おいしく食べて健康づくりの一助にしてください」と話しています。