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気がつかないうちに視野を失う緑内障
情報誌けあ・ふるVOL.98(2019/1) 掲載

公立学校共済組合 関東中央病院 病院長
東京大学 名誉教授

新家 眞 先生

定期検査で早期発見、進行予防の治療を

 加齢とともに注意しなければならない病気の1つに緑内障があります。多くの場合、長い時間をかけてゆっくり少しずつ視野が欠けていくため気づきにくいのですが、放っておくと、失明の恐れがあります。緑内障のリスクが高まるのは40歳を過ぎた頃からで、歳をとるごとに発症率は上昇し、70歳以上では8%の人が緑内障と報告されています。公立学校共済組合関東中央病院病院長の新家眞先生に、緑内障の原因、早期発見のための検査、治療などについてうかがいました。

眼圧が上がり視神経が傷つくと見える範囲が狭まってくる

 私たちがものを見ることができるのは、光が眼球を通して網膜に届き、その刺激が視神経を経て脳に伝わるからです。緑内障は、この視神経が障害されることによって見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
 では、なぜ視神経が障害されるのでしょう。新家先生はそのメカニズムを次のように説明します。
 「主な原因は『眼圧(眼球内の圧力)』の上昇と考えられています。目の中には『房水』と呼ばれる液体が流れていて、血液の代わりに水晶体や角膜などに栄養や酸素を運んでいます。房水は、目の毛様体という部分で作られて、隅角を通ってシュレム管から排出されています。この房水の圧力(眼圧)が眼球の固さを一定に保っています。しかし、排出経路が詰まるなどして眼球内の房水の量が増えると、眼圧が上がります。眼圧が上昇すると、視神経が圧迫されて傷つき、徐々に障害されていくのです」(図1)。

進行は3段階に分けられ最後は失明に至ることもある

 眼圧が上がっても痛みなどの症状はなく、多くの場合で視野が欠けてもかなり進行するまで自覚症状はありません。これは、徐々に欠けていく視野をもう一方の目が補ったり、脳がその部分のイメージを補正するためです。
 緑内障の進行は3段階に分けられます( 図2)。初期は、目の中心からやや外れたところに暗点(見えない点)ができます。中期になると、暗点が拡大し、視野の欠損(見えない部分)が広がり始めます。しかし、この段階でも両方の目が欠損をカバーし合ったりして異常を意識しない人が多いようです。
 そして末期になると、視野はさらに狭くなり、日常生活に支障をきたすようになります。さらに放置すると失明のリスクが
高まります。
 新家先生は「緑内障の多くは、5~30年かけてゆっくり進行する慢性の病気で、かなり悪化するまで気づきにくいのが特
徴。定期的な検査で異常を早期に見つけることが大事です」と注意を促します。

原因によって分類すると4つのタイプがある

 一口に緑内障といっても、原因はさまざまで、大きく4つのタイプに分類されます。
 ①「原発開放隅角緑内障」。隅角の先にある房水の出口が徐々に目詰まりを起こして眼圧が上昇し、ゆっくり進行していく慢性のタイプ。この中に、眼圧が正常範囲にもかかわらず緑内障を発症する「正常眼圧緑内障」が含まれます。日本人には正常眼圧緑内障が多く、緑内障全体の約7割を占めています。
 ②「原発閉塞隅角緑内障」。房水の出口である隅角が塞がって房水の流れが妨げられ、眼圧が上昇します。60歳代以上の女性、遠視、もともと隅角が狭い人に起こりやすいといわれています。隅角が徐々に塞がる慢性型と、急に塞がる急性型があります。
 ③「発達緑内障」。生まれつき隅角が未発達のため起こるタイプ。
 ④「続発性緑内障」。外傷、角膜やブドウ膜の病気、薬などの影響によるもの。
 「それぞれのタイプによって治療法が異なるため、的確な診断が重要です」と新家先生は強調します。

3種類の検査を組み合わせて緑内障を早期に発見

 緑内障は加齢とともに発症のリスクが高まります。しかも、自分では異常に気づきにくいという特徴がありますから、早期発見のためには、定期的な検査が欠かせません。
 検査には「眼圧検査」、「眼底検査」、「視野検査」の3つがあります。
 眼圧検査は、目の表面に眼圧計を接触させたり、空気を当てたりする方法で眼圧を測定します。
 眼底検査は、眼底を直接観察し、視神経の状態を調べます。緑内障であれば、視神経の変形などの障害が認められます。
 視野検査は、視野欠損(見えない範囲)の有無、大きさを調べ、緑内障の進行具合を調べます。
 新家先生によると、中でもとりわけ重要なのが眼底検査。眼底の形態、とくに視神経が集まっている視神経乳頭部やその周辺の状態に異常がないかを調べます。
 「緑内障の発症には眼圧が関与しています。このため、検査というと、眼圧検査に目が行きがちですが、眼圧には個人差があり、もともと眼圧が低い場合、上昇していても正常範囲(10〜20㎜Hg)にとどまるケースがあります。とくに日本人は、前述の通り、眼圧が正常でも緑内障になる人が多く、眼圧検査だけでは見逃してしまうことが多いです。早期発見のためには、眼圧検査に加え、眼底検査を合わせて受けることが大切です」(新家先生)。

基本的な進行抑制は点眼薬での薬物療法

 緑内障の治療は、眼圧を下げて、病気の進行を食い止めることが目標となります。基本となるのは点眼薬による薬物療法です。
 点眼薬には、房水の流れを良くするタイプと、房水の産生量を減らすタイプがあります。どちらも、眼圧を強力に低下させる作用を持っています。
 それでも不十分であれば手術で房水の排出を促進させます。ただし、原発閉塞隅角緑内障の場合は、薬物療法の前に手術療法が適応となります。続発性緑内障なら原因になっている疾患の治療も並行して進めます。
 薬物療法で大事なのは継続することです。この治療によって視力が回復するわけではありません。しかし、即効性はなくとも、毎日使い続けることで進行を抑え、視野の欠損や視力の低下を防ぐことができます。
 新家先生は「緑内障には失明の恐れがありますが、早く見つけて薬物療法で眼圧を下げれば、進行を食い止める可能性が高まります。その意味では、そう怖い病気ではありません。重要なのは、異常を早く察知すること。緑内障のリスクの高まる40歳以上の方は、年に1回は眼科で定期検査を受け、早期発見につとめて下さい」とアドバイスします。