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お客様の声

スマートベッドシステムで看護業務改革

三菱京都病院 看護部長
嶋 雅範さん

 京都市の住宅街にある三菱京都病院では2018年にスマートベッドシステム(図1)を導入しました。同システムは非装着のセンサーによってベッド上の患者の起床・離床を検知し、通信機能付きバイタルサイン測定機器と連動して体温や血圧などをベッドサイド端末で読み取り、電子カルテに記録します。このベッドサイド端末には患者ごとの状態や制限事項がピクトグラム(絵記号)で表示されるなど、情報共有ツールとしての機能があり、医療安全や看護業務の効率化などの面からも注目されています。同病院の嶋雅範看護部長に導入の経緯と成果、今後の展開などについてお聞きしました。

時間外勤務の半分以上を 占める記録業務を軽減

 三菱京都病院は1946 年に三菱重工業株式会社(後に三菱自動車工業株式会社)の企業立病院として設立され、現在は188床を持つ地域の中核病院です。循環器、周産期およびがん診療などの急性期医療・緩和ケアに強みを持っています。
 当院では2018年に老朽化したベッドを更新する際、急性期病棟の96床にスマートベッドシステムを導入しました。当時、約250名の看護師が勤務していましたが、絶えず忙しく、時間外勤務が多いなど課題が山積していました。そこで、看護業務の効率化を進めるために、負担になっている業務を分析したところ、看護業務の中でも、特に記録業務が年々増えており、時間外勤務時間の50〜60%が記録作業に充てられていました。全業務で見ても20〜30%に達するほど記録業務の負荷が高まっていました。これを効率化して看護師の働き方改革につなげ、患者に寄り添う時間を増やせるようにしたいと考え、このシステムの導入を決めたのです。
 また、こうした先進的なシステムを積極的に採用し、看護師たちの意識改革を図ることで、指示を待つのではなく自分たちで現状を変えて、新しいことに挑戦していこうというモチベーションにもつながると考えました。

患者の状態や制限事項を ベッドサイド端末に自動表示

 スマートベッドシステムを導入してみて、まず、通信機能付きの体温計や血圧計などをベッドサイド端末にタッチさせるだけで電子カルテに入力されるので、体温や血圧などのバイタルサインの記録の頻度が大幅に増えたにもかかわらず、測定時間と入力時間は数時間単位で減りました。
 従来は午前中に測った血圧や体温などを、メモを見ながら午後に電子カルテへ入力していました。すると、どうしても誤入力や入力もれが生じてしまう。また、患者の容態が急変したとき、直近のバイタルサインがまだ記録されていないという問題も発生していました。このシステムの導入によって、簡単かつ正確に記録できるようになりました(図2)。
 もう1つの成果が、患者ごとの状態や制限事項をベッドサイド端末にピクトグラムで表示できるようになったことです(図3)。これまでは、検査のために欠食する必要があったり、水分制限など電子カルテにある重要な注意情報は、そのつど紙に書き出してベッドの脇などに貼り付けていました。これでは何のための電子カルテ化なのかわかりません。
 共有すべき必要な情報がベッドサイド端末に表示されるようになって、確認のためにスタッフステーションと病室を行き来する必要もなくなりました。

体温計や血圧計などの通信機能付きバイタルサイン測定機器をベッドサイド端末受信部にタッチさせると、画面に数値が入力される。
電子カルテにある患者ごとのバイタルサインや制限事項などの情報がベッドサイド端末で確認できる。

新型コロナウイルスへの対応で スマートベッドシステムを追加導入

 さらに付け加えれば、先進システムの導入は看護師採用にも好影響をもたらしています。見学に来た学生にはスマートベッドシステムでバイタルサインの入力作業などを積極的に見せるようにしています。学生は就職先を決めるためにさまざまな病院を見学していますが、当院のこうした看護業務の改革の取り組みを高く評価してくれます。
 2020年10月には新型コロナウイルス感染症患者に対応するために、新たに12床にスマートベッドシステムを導入しました。通信機能付きのバイタルサイン測定機器は、患者自身が扱えるように改善することで、医療スタッフと患者との接触による感染リスクを低減する対策としても有用です。ベッドサイドで音声入力できるシステムや携帯端末に連動させるシステムも構築中です。
 さらに、21年には医師が電子カルテの情報をベッドサイド端末からも見られるようにする予定です。そうなると、医師はベッドサイドで患者を診察する前に、スタッフステーションで電子カルテ情報を確認する作業が不要になります。また、患者のベッドサイドで病状などの説明がより詳しくできるようになります。

代替できる業務はICTを活用 看護業務をベッドサイドに集約

 スマートベッドシステムは拡張性が高く、今後はもっといろいろなことが実現できると考えています。私はできることならば、ICTの活用で代替できる看護業務はすべて任せていきたいと思っています。ベッドサイド端末はそのためのハブになり得ます。病室内のさまざまな医療機器、例えば輸液の注入ポンプ、静脈血栓塞栓症防止のためのマッサージ機器などとつないで一括監視できるようにすれば看護業務はさらに大きく変
わります。
 ゆくゆくはスタッフステーションの機能をベッドサイド端末に集約させ、看護師はいつも患者のそばにいて、定時になったら帰宅できるような病院にしたいと思います。将来的には在宅医療への応用も考えられます。遠隔で病室を管理できれば、居宅でも同様のシステムで対処できることがあるはずです。ICTの専門家とも協力して、当院を新しいシステムを生み出す場にしていきたいと考えています。
(掲載情報:2021年1月時点)

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