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お客様の声

スマートベッドシステムの導入と効果

社会医療法人 祐愛会織田病院
理事長

織田 正道 先生

 ベッド上の患者の心拍数・呼吸数、睡眠・覚醒などの状態を独自のセンサーにより非装着で連続測定するほか、さまざまな生体情報を一元管理します。そしてその情報をリアルタイムでスタッフステーションへ通知し電子カルテに登録する「スマートベッドシステム」。社会医療法人祐愛会織田病院は、患者の安全・安心・安楽、スタッフの業務負担の軽減を目的に同システムを導入しました。その効果や運用のポイントについて同病院の織田正道理事長、原﨑真由美看護部長、医療安全管理部山口賢太副師長にお話しいただきました。

地域の基幹病院として最適な医療を提供

 社会医療法人祐愛会織田病院(一般病床111床)は、2019年4月から「スマートベッドシステム」の運用を開始しました(図1)。
 当院は佐賀県鹿島市の基幹病院として地域の診療所と協力し市民の健康に寄与しています。急性期医療を担うとともに、国が推進する在宅医療の充実にも力を入れています。
 在宅医療では、地図情報とスタッフが持つスマートフォンのGPS機能による位置情報を活用した在宅医療支援システム(スタッフの移動や状況に応じた業務指示・フォローを行える)を2016年に導入するなど、ICTを活用した業務の効率化を進めています。 
 今回、スマートベッドシステムを導入した背景には、以下のような当院の目標と取り組みがあります。
 当院では「治し支える医療」を目標に、退院後の在宅医療に向けて、多職種協働フラット型チーム医療を提供しています。また高齢患者の尊厳を守るために身体拘束しないことを優先するとともに意思決定支援に力を入れています。
 スタッフの働き方に対しては、IoT(インターネットオブシングス)を活用しながら業務改善を図り、効率化を進めています。

ベッドサイド端末、通信機能付バイタルサイン測定機器、スタッフステーション端末、体動センサーなどのICT機器を組み合わせて、各種の機能を発揮する。

患者の安全と業務効率化がシステム導入の目的

 スマートベッドシステムの導入目的は次の2つです。
1.患者の安全・安心・安楽の確保。具体的には「体動センサーを活用した在床確認」、「夜間の睡眠確保」、「呼吸数、心拍数の確認」です。
2.業務の効率化。具体的には「通信機能付バイタルサイン測定機器による看護記録入力業務の低減」、「患者情報やピクトグラムの表示による多職種の情報共有」、「睡眠や覚醒表示を活用したステーションでの夜間見守り」です。
 これらの目的を達成できるものとして選択したスマートベッドシステムは、マットレスの下に設置した体動センサーが測定した患者の状態(睡眠、覚醒、離床)をスタッフステーションの端末画面に表示、通知させるシステムです。また、通信機能付バイタルサイン測定機器を同システムのベッドサイド端末にかざすことで、血圧や体温などを電子カルテに記録します。さらに連携する電子カルテ上の患者基本情報、重症度、医療・看護必要度などの情報、患者の状態と制限事項をイラストで示すピクトグラムをベッドサイド端末に表示させることで、家族や医療スタッフが適宜、情報共有できます。今後、酸素使用量、食事摂取量、排泄回数、寝具・寝衣交換などの情報もベッドサイド端末で入力可能となる予定で、さらに利便性が高まると期待しています。

社会医療法人 祐愛会織田病院
看護部長
原﨑 真由美さん
社会医療法人 祐愛会織田病院
医療安全管理部 副師長
山口 賢太 さん

患者の睡眠を妨げずスタッフの仮眠時間も確保

 スマートベッドシステムの導入後、効果が明確に現れたのは夜間の見守りです。定期巡回に加え、気になる患者は頻回に巡回して確認をしていましたが、スタッフステーションで患者が睡眠中か、覚醒しているか、離床しているかを確認できるので、睡眠の妨げを最小限に抑えることができます(図2)。
 業務面では、これまで病室近くの廊下に待機していることもありましたが、ステーション端末画面での見守りが可能となったため、看護師が廊下にいる時間が大幅に削減されました(図3)。また、導入前は十分に取れていなかった仮眠も、導入後は90分間取れる割合が増加しました(図4)。
 また、夜間の転倒予防にも活用を始めています。体動センサーから送られたデータを「睡眠日誌」として記録、分析し、睡眠パターンを把握することで、夜間に十分な睡眠を取れるように日中の活動を促したり、夜間の排尿パターンを考慮した排尿誘導も行えます。
 薬剤師は睡眠薬・抗認知症薬などの効果確認に睡眠日誌を利用しています。

スタッフステーションに設置した端末の大型画面で患者の状態を確認できる。
大きく変化した滞在場所は廊下。必要に応じて患者の病室を訪問するようになったことが影響している。
約65%の看護師が、仮眠時間90分を取得できるようになった。巡回などでスタッフステーションが無人になる時間が減ったため、仮眠中に起こされることが少なくなったことが要因。

スタッフの理解を深めて理想的な病棟環境を目指す

 スマートベッドシステムの導入の効果を高めるための運用上のポイントとして、スタッフの意識改革があります。
 ベッドサイド端末と通信機能付バイタルサイン測定機器の組み合わせによって簡単にバイタルサインのデータを取り込めるのですが、この機能を看護師をはじめとするスタッフが活用するのに3カ月を要しました。
 計測しメモ書きしたバイタルサイン値を電子カルテにまとめて入力する従来の方法が慣れているため、良いと考えるスタッフもいました。そこで医療安全の担当スタッフから当システムの活用によるメリットを説明しました。転記ミスが発生しないこと、ベッドサイド端末からタイムリーに情報を入力すると経時的な値の変化を医師をはじめとする医療スタッフが共有しやすいこと、面会時以外の患者の状態を家族と共有できることなど、メリットの理解が進むことで、スタッフによる活用が促進されました。
 今後も、患者の安全・安心・安楽のため、スタッフの負担軽減のために、IoTを積極的に活用して理想的な病棟環境の構築を目指していきます。