知る・学ぶ

取り組み事例

骨盤を起こした背上げ姿勢の重要性 座位を安定させ褥瘡と寝たきりを予防
情報誌けあ・ふるVOL.105(2020/10) 掲載

統合医療 希望クリニック
院長

堀田 由浩 先生

 在宅介護で寝たきりを防ぐには、まずはベッド上で楽に座ること、その状態で無理なく食事や呼吸ができること、さらに自然に離床できることが重要です。介護用ベッドはそのための大きな役割を果たします。褥瘡治療・在宅ケアの専門家である統合医療希望クリニック院長の堀田由浩先生に、寝たきりにさせないための介護用ベッドに求められる機能とともに、骨盤を起こした形で背上げ姿勢をとれる介護用ベッド「楽匠プラスシリーズ(以下、楽匠プラス)」についてお聞きしました。

 在宅で介護される方が寝たきりになるのを防ぐために介護用ベッドは重要な役割を果たします。特にベッド上で座位になるための背上げ機能の活用は、寝たきり予防の第一歩ともいえます。
 身体を起こすメリットは、呼吸や食事がしやすくなるといった身体的なものばかりではありません。視野が生活空間へと広がるため、周囲の人とのコミュニケーションも図りやすく、それらの刺激が活動意欲を引き起こし、認知機能の維持向上にもつながります。

背上げ時の骨盤の後傾が従来の介護用ベッドの課題

 とはいえ、従来の介護用ベッドにはいくつかの課題がありました。
 背上げ時は肩甲骨から腰方向へ押す力が働きます。するとお尻がずれて椅子に浅く腰掛けたまま背もたれに寄りかかったような状態になって、骨盤が後ろに傾いてしまいます(図B)。
 このように骨盤が後ろに傾いた状態では正しい座位がとれないため、上体を前にかがめることができません。首は突っ張った状態になるので誤嚥を引き起こしたり、上半身を自由に動かせないので座位を保てないなどの問題が生じます。
 また、腹部が圧迫されるため、呼吸がしにくくなったり、食欲不振の原因にもなります。
 さらにもう一つの問題は、腰方向へ押す力により上半身の体重が臀部に集中してかかることです。高齢者は皮下脂肪が少ないので、臀部にかかる圧や摩擦で組織が損傷しやすく、褥瘡につながる要因となります。
 こうした問題を解消するため、背上げで生じた身体の位置のずれや骨盤の状態を修正する「背抜き」などの介助が必要でした。

図A 腰サポートがしっかりと骨盤を起こした状態で背上げができる
図B 骨盤が後傾し、肩甲骨から腰の方向へ押す力がかかり、体重が臀部に集中する

骨盤を起こすことで上半身を自由に動かせる

 在宅向け介護用ベッド「楽匠プラス」は、これらの課題が大きく改善されたベッドです。
 もっとも評価できるのは、背上げ時に骨盤を起こす機構が搭載されたこと。背と腰を支える床板が独立して動きながら背を起こすとともに、骨盤部にあたる床板の曲がり方が変わることで背中を支持しながら骨盤をしっかり起こす仕組みです(図A)。
 実際にこのベッドに寝て背上げをしてみると、従来の介護用ベッドの背上げ時に感じる肩甲骨から腰にかけて押される感じや腹部の圧迫感が解消されていることが分かります。実はこうした圧迫は筋肉の緊張を引き起こし、全身の拘縮にもつながるのです。
 骨盤が立つと、その上に腰椎、胸椎がしっかりと載ります。そのため座位の姿勢が安定するのも大きな利点です。時間がたっても姿勢が崩れにくい。利用者本人の心地よさはもちろんのこと、介助者にとっても負担の軽減につながると考えられます。
 骨盤が立つことで腹部が圧迫されず、上半身がバランスよく自由に動かせるので、身体を前に倒したり、ねじったりといった動作もしやすくなります。坐骨にかかる圧も本人自身が調整でき、これも褥瘡予防につながります。
 また、ベッドサイドに置いた飲み物や本を取ったり、ベッドサイドにいる人と顔を合わせながら話せるので、リハビリや離床へのモチベーションにもつながるでしょう。
 背上げ時に骨盤が起きることで身体が足側にずり落ちにくくなるのも大きな評価ポイントです。従来の介護用ベッドでは背上げ時に足の位置がずれるため踵などに摩擦が生じ、褥瘡の原因となることが少なくないからです。

膝部が多段階で曲がる離床しやすいベッドの高さ

 「楽匠プラス」には、背上げ機能以外にも様々な評価ポイントがあります。その一つが膝上げ機能です。一般的な介護用ベッドでは膝の曲がる位置が決まっており、小柄な方などでは膝の位置がずれて負担になることがありました。しかし「楽匠プラス」の膝部は多段階で自然に曲がるため、身長差をカバーしてベッドの動きにフィットしやすくなったので身長の高低を気にせず使えます。
 「楽匠」シリーズの「ラクリアモーション」という機能も寝たきり防止に役立ちます。この機能は、ベッド全体が足側に傾き上体と膝を上げて座った姿勢になるというもの。足先が水平よりも下がった状態の座位の姿勢が可能になるので、ベッドから足をおろして離床しやすいのが特徴です。
 「楽匠プラス」ではこの「ラクリアモーション」が改良され、従来よりベッドを低くして使えるようになったため、ベッドに腰掛けた状態で足を床に着けて立ち上がりやすくなりました。こうした工夫が「離床」への大きな後押しになります。
 限られた介護力での支えが必要になる在宅では、「楽匠プラス」のように、自然に正しい姿勢にできるような介護用ベッドを選ぶことが寝たきりにさせないための近道になるのではないかと思います。

介護用ベッド 「楽匠プラスシリーズ」