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取り組み事例

ベッドで褥瘡予防はここまで変わる
情報誌けあ・ふるVOL.99(2019/4) 掲載

関西労災病院 リソースナースセンター
皮膚・排泄ケア認定看護師
創傷管理領域特定看護師

渡邉 光子 さん

背上げ座位は褥瘡の原因になる

 近代看護教育の母と呼ばれるフローレンス・ナイチンゲールは、看護における患者の生活環境の調整・整備の大切さを説いています。それを踏まえ、患者の入院中あるいは在宅療養中の生活の場となるベッドについてもう一度考えてみたいと思います。
 患者の日常生活では食事やテレビ鑑賞などのために、ベッドの背上げ機能を活用して上半身を起こした姿勢、いわゆる背上げ座位をとることが何度もあります。ところが、股関節の位置がベッドの可動基点と一致していないと背上げの時に骨盤が起きないため、背上げをするたびにどんどん足元のほうに身体がずれていってしまいます。しかもその状態で背上げ座位を続けると、尾骨に体圧が集中して褥瘡の原因になります。
 そこで、背上げ座位にするときは、股関節とベッドの可動基点を一致させてから動かし始める必要があります。しかし、そうした操作は容易ではなく、そもそも股関節の位置はナースでも理解できていないことがよくあります。そのため、食事の時などは患者に車いすへ移動してもらうなどの工夫をすることも多いのですが、本来であればベッド上で患者が背上げ座位を保持できればよいわけです。私はそれが可能なベッドができないものかと長年待望していました。

体圧を適切に分散させるカインドPLUSモーション

 そうした中、パラマウントベッドが、背上げ座位を保持できる病院用の「メーティスPRO」と在宅用の「楽匠Z」という2種類のベッドを開発しました(写真)。
 これらのベッドには、1つのボタン操作により、背上げと膝上げの角度を自動で調節する動作にベッド全体が傾く動きを加えることで、起き上がり時の身体のずれや圧迫感を軽減する「カインドPLUSモーション」と呼ばれる機能が搭載されています。この機能を使うと、患者の体重が坐骨に集中せずに大腿後面で支えられるようになります。背上げ機能だけで50度まで背上げすると、坐骨には50㎜Hg以上の体圧がかかるといわれています。しかし、「カインドPLUSモーション」を用いると50度まで上体を起こしても体圧が広く分散されるため、結果として褥瘡もできにくくなります(図)。

「カインドPLUSモーション」で褥瘡対策が進む

 当院では「カインドPLUSモーション」を搭載したベッドを導入したことで、褥瘡が改善した事例が多数あります。
 例えば、脊椎疾患で入院して、本来は座位は禁止だった患者の場合は、炎症による痛みがあまりにも強いために座位を好まれ、1日のほとんどを背上げ座位で過ごしていました。その結果、尾骨褥瘡を発症しました。そこで本人に「カインドPLUSモーション」のメリットを説明し、ベッドを「メーティスPRO」に変更して使い方も説明しました。すると変更した翌日から褥瘡局所の発赤が消失し始め、1週間ほどで褥瘡は改善しました。
 また別の例で、尾骨に黒色壊死を伴う褥瘡を有する患者のベッドを「メーティスPRO」に変更しました。この患者は1日3回の経管栄養のため長時間、背上げ座位をとられていました。しかし、正しい「カインドPLUSモーション」を使用することで、座位時間もかなり長かったのですが、5日ほどで局所の炎症の鎮静化と創部の清浄化も行えました。
 坐骨に1年以上にわたる難治性褥瘡を有する在宅療養患者のケースでは、圧とずれを補正した療養環境をつくるために、エアマットレスをパラマウントベッドの「ここちあ結起(ゆうき)」に切り替えました。「ここちあ結起」は体幹が左右に傾斜するのを防ぎ、左右への体幹の傾斜を最小限にとどめることができます。そしてベッドも「カインドPLUSモーション」と同機能が付いた「楽匠Z」に変更し、局所ケアから姿勢保持に視点を移して褥瘡ケアに取り組んでいます。

ベッドを上手に活用して褥瘡を予防

 「メーティスPRO」にも「楽匠Z」にも一般的な電動ベッドと同じように、背上げと膝上げのためのボタンもそれぞれ独立して付いています。しかし、褥瘡ができにくい背上げ座位にするためには、身体のずれを軽減し臀部への体圧を分散させる「カインドPLUSモーション」のボタンを積極的に使うことをおすすめします。