身体になにも装着せず、ただ寝ているだけで睡眠を計測。
非装着で睡眠を計測するためには、まず微小な体動が検出できるセンサーが必要でした。ベッドに寝ている方の胸の動きをベースとして、寝返りなどの大きな体動も検知できなくてはなりません。そのためには、センサーの個体形状・構成、そして感度設定などさまざまな要素について試作や設定を繰り返し、研究目的に適った独自のセンサーを作りあげることから始まりました。開発担当者たちは、毎日のように試作したセンサーを持ち帰り自分の睡眠を測定し、データを蓄積していったのです。この蓄積したデータをもとに、ベッド上で発生するさまざまな振動を検証して、ノイズの除去などの精度が高められていきました。そして、人が眠っているときと起き
ているときの体動の違いに着目することで、より精度の高い独自の睡眠判定アルゴリズムを導きだしたのです。試作品は現場に持ち込まれ、実際の患者様や施設に入居されている高齢者で、測定検証が行われました。また、実験室では、睡眠に関する研究で広く世界的に使われている装着型のアクチグラフとの比較検証が進められ、同等の測定精度が得られていることが確認されたのです。こうして生まれた「眠りSCAN」は、身体になにも装着する必要がなく、マットレスや敷き布団の下に敷くだけで、睡眠・覚醒・起きあがり・離床および就寝時の呼吸数を計測でき、高い精度で睡眠状態の評価を実現したのです。
体振動センサーが判定した生波形データ




呼吸運動による0.3Hzくらいの高振幅振動に心弾動(心臓の鼓動)による高周波の低振幅振動とが重ね合わさった波形が測定される。身体を動かした場合は、呼吸運動よりも圧倒的に大きな振動が測定されるので、波形は大きく乱れ、呼吸と心拍の測定はできないが、睡眠状態の判定に使う活動量が測定される。
「眠りSCAN」がもたらす、
飛躍的な業務改善。
「眠りSCAN」がもたらすのは、さらなる安心とタイムリーなケアです。計測した患者の状態は、24時間・リアルタイムでパソコンやスタッフの携帯端末に通知されます。また専用のソフトウェアにより、どの部屋のどの患者が眠っているか、呼吸数は正常か、などが一覧で表示できます。多くの介護施設では、人員不足のため夜間の見回りがスタッフの負担になっています。「眠りSCAN」を導入すれば、たとえば見回りの頻度を減らすことができます。さらに夜間寝つけない利用者を見つけて、生活プランの改善や指導につなげることもできます。すでに「眠りSCAN」を採用した介護施設では、現場のスタッフから高い評価を受けています。睡眠の問題は、医療介護施設に限った話ではなく日本社会の大きな問題でもあります。睡眠不足や睡眠の質の低下は、うつ病や生活習慣病の原因にもなると指摘されています。また、過労運転による職業運転手の事故が社会問題となっているように、睡眠不足は自動車事故のリスクも上昇させます。「眠りSCAN」は国土交通省の平成25年度事故防止対策支援推進所業において、過労運転防止に資する機器として補助金事業の対象機器に選定されたのです。

自ら生体情報を取りにいくベッドへの進化。
睡眠計測の技術をさらに進化させていけば、ベッドを介してさらに価値のあるデータを取ることができるかもしれません。
そこには、大きな可能性が広がっています。たとえば、「眠りSCAN」で得られた呼吸数などのデータに、
既存の体温計や血圧計の情報を組み合わせることができれば、患者の生体情報を一元的に
管理することも可能でしょう。病院や介護施設では、まだまだ煩雑な業務があふれています。
生体情報の計測とカルテへの記入などの手作業を減らすことができれば、他の業務へより注力でき、
よりよいケアにつながることが期待できます。ベッドの役割は、大きく変貌を遂げるのかもしれません。
患者に快適な眠りを提供するだけでなく、常時自動的にデータを集める情報のプラットフォームへ。
これからもパラマウントベッドは、よりよい療養環境を実現するために技術開発を続けていきます。

睡眠計測の技術をご家庭に。
睡眠状態に合わせてベッドが動く“眠りの自動運転”を実現。
一人ひとりに合った良質な睡眠を提供することを目指して、睡眠計測技術を展開した一般家庭向け電動ベッドActive Sleep Bedを開発。
Active Sleep Bedは、体調や気分に合わせてスムーズに入眠できるように、呼吸がしやすく、腰や足が楽になるようなベッドポジションを提供します。
そしてベッドが入眠を検知すると、熟睡に必要な寝返りを自然に打てるように、自動的にゆっくりとベッドをフラットに戻します。
起床時には、設定した起床時刻に近づくと、眠りの浅くなった状態を検知して、自動的に背を起こし、心地良い目覚めを促します。
電動ベッドと睡眠計測技術とを組み合わせることによって、スリープテック分野からヘルスケア分野まで拡がる可能性に対して大きな関心が寄せられています。