デザインの研究

誤操作の許されない環境だからこそ、
使いやすく、わかりやすいデザインを。

電動ベッドをはじめとする医療・介護用具は、誤操作が許されない環境で使用されるため、
パラマウントベッドには、従来より使いやすく、わかりやすいデザインが求められてきました。
私たちは、誰もが使いやすい製品をさらに追求していくため、
ユニバーサルデザインのノウハウを2001年より導入し、
評価シートによる製品評価や、実際の現場でのモニタリング評価など、
多岐にわたる活動を開始しました。

「デザイン・シンキング」の画像

イノベーションとは、
「当たり前の便利」掘り起こすこと。

パラマウントベッドは2015年、デザインの新しい潮流となっている「デザイン・シンキング」という手法をいち早く採用しました。技術要件や市場ニーズだけでなく、生活(日常動作)のなかで新たな発見を導きだす。これまで当たり前だと思っていたことにあらためて着目することで、製品に思わぬイノベーションをもたらします。そのために大切なのは、ふだん人がなにげなくやっている動作を観察し、その詳細を具体的に記録していくことです。たとえば、使い慣れている製品のスイッチを押すとき、どのような姿勢を取るのか、どちらの手を使うのか、そしてどの指で押すのか。病院や介護施設に足を運び、実際にスタッフの動きを逐一観察することで、現場環境の改善すべきところに気づくことができるのです。

たとえば、療用ベッドのグリップ。
握りやすく、の入れやすい
デザインとは。

私たちは、病院で患者様の手術や転室の際に、スタッフが2名でベッドを動かしている様子を、あらためて観察しました。モーターなど電子部品を多く積んだ電動ベッドの搬送は力仕事で、スタッフの負担は少なくありません。そこで、搬送用グリップの角度や形状に着目しました。求められるのは、ベッドを搬送する際に、後ろから押すスタッフが力を入れやすく、先頭のスタッフがベッド側面から握りやすいデザインです。この課題に応えるため、実物大モックアップの製作や、3Dプリンターによるグリップ部分の試作などを繰り返し行い、握りやすさと搬送性の評価を実施しました。そして人間工学の観点も取り入れ、中手指節関節ラインに合わせてボードのグリップに角度をつけることで、握りやすく、力を入れやすいグリップの開発に成功しました。こうして生まれた新しい搬送用グリップは、医療施設向け電動ベッド「メーティスPROシリーズ」に装備され、多くの病院で使用されています。軽量化や荷重バランスの改善なども寄与して、ベッドを動かすのに必要な力を、旧製品より約2割軽減することに成功しました。※人差し指から薬指までの中手指節関節(手の指の付け根にある関節)にそったラインのこと。

医療用ベッドのグリップの画像
体位変換器「ペンギンサポート」の画像

小柄な女性の介護スタッフでも、
体位変換を軽い力で。

介護の現場には、力仕事があふれています。おむつ交換などの際に行う側臥位への体位変換や寝位置の修正は、そのひとつです。ひとりで複数の利用者様を担当することの多い介護スタッフは、これらの作業で腰を痛めることも少なくありません。デザイナーはこの課題に着目し、無理なく体位変換できる方法はないか模索しました。実際に介護セミナーにおもむいておむつ交換作業を履修し、自らの研究テーマを掘り下げました。そして理学療法士などの専門家の指摘を受けながら、何度も試作を繰り返し、ついにデザイナー自身でも簡単に使える体位変換器「ペンギンサポート」を開発したのです。「ペンギンサポート」は、介護される方の背中に差し込み、腰に手を添えて回転させるように引くだけで、簡単に側臥位へ体位変換ができます。また、固定部をサイドレールなどに取り付けることで側臥位を保持できるため、身体を支える必要がなく、両手でおむつ交換などの作業が可能です。「ペンギンサポート」は、2013年グッドデザイン賞を受賞しました。小柄な女性の介護スタッフが、大柄の男性高齢者の体位変換を軽い力でできると、現場では高い評価を受けています。

気持ちにも寄り添った、
「生活の場」デザインを。

医療・介護の現場は、ただ医療や介護サービスを受ける場だけでなく、生活の場でもあります。求められるのは、スタッフの使い勝手や業務効率だけでなく、看護・介護される方の気持ちにも寄り添ったデザインです。少しでも快適に、気持ちよく過ごしてもらえる空間づくりのために。製品デザインのひとつひとつには、私たちの想いが込められ、それが「パラマウントベッドらしさ」として結実しています。

気持ちにも寄り添った、「生活の場」のデザインを。
世界地図

そして、パラマウント・デザイン」グローバルに。

パラマウントベッドは近年、中国や東南アジアをはじめ、広く海外展開を行っています。
その国の人々が使いやすい製品をつくるためには、まずその国の文化や嗜好を知らなければなりません。
パラマウントベッドのデザイナーは、インドネシアやタイなどの病院・介護施設に足を運び、現地の状況を
つぶさに調査しています。現地の医療スタッフと意見を交換して、現地の人々に好まれるデザインや色などを
調べることで、多くのことを発見できるのです。たとえば、日本では一般的に使われる色でも、別の文化圏では
そうとは限りません。宗教や文化などの理由で、製品の意図や目的にふさわしくない色がある場合もあります。
実際に使う人にとって、使いやすく、わかりやすいデザインとはなにか。私たちの追求は続きます。