離床センサーの研究

困りごとを見つけ、解決するため、まず「人」に目を向ける。

医療・看護の現場の困りごとを解決するため、技術者はベッドだけでなく、医療・介護スタッフに目を向けています。
多くの病院・介護施設では、ベッドからの転倒転落対策として、患者様がベッドから起きあがったり、
立ちあがったりすることを検知し、ナースステーションに通報する「マット式センサー」を導入しています。
しかし、ベッドやゆかに敷いて使うマット式センサーはわずかな患者様の動きにも反応するため、
患者様が寝返りを打っただけでナースコールが鳴ってしまうケースもありました。ひとたびナースコールが鳴ると、
スタッフはすぐに病室に駆けつけて、患者様の様子を確認しなければなりません。
誤報が多いと、せっかく導入した設備もスタッフの負担となりかねません。誤報を減らし、スタッフの負担を少しでも減らしたい。
技術者たちはそう考えて、これまでにはない、正確で安全に使える離床センサーの開発をスタートさせました。

「誤報をどこまで減らせるか」への挑戦。

誤報をどこまで減らせるか」
への挑戦。

技術者たちは、夜間病院に泊まり込み、ナースコールが鳴るたびに駆けつけて状況を確認するなど、調査を繰り返しました。その結果、マット式センサーの誤報の多くは、寝返りなどで身体がベッドから一瞬離れることや、ケーブルに足をひっかけてしまうことが原因だと判明しました。それらの誤報を減らすために技術者たちが考えついたのは、ベッド自体が患者様の体重を検知するシステムでした。これなら、寝返りなどの動きでたびたび反応することがなく、ケーブルもいりません。これを実現するためには、電動ベッドを動作させる駆動ユニットに荷重センサーを内蔵する必要がありました。

さまざまな動作パターンを
検証して磨かれた、
離床CATCH」。

電動ベッドの駆動ユニットに荷重センサーを内蔵する際、苦心したのは、正しく荷重を計測できるよう組みつけることでした。ベッド下に位置するアクチュエーターに内蔵した荷重センサーは、さまざまな部品の干渉を受けるため、そのままではベッド上の患者様の荷重を正しく判別することが困難でした。そこで、部品をひとつずつ検証し、駆動ユニットを一から作り直すほどに改良しました。さらに技術者たちは、高齢者がどのような動作で起きあがるのか、手足はどのように動かすのか、そしてベッドのどこから離床するのか、などを現場でつぶさに観察し、1年以上にわたる検証を繰り返して独自のアルゴリズムを構築しました。それは、一瞬の変化を拾うのではなく、一定の期間における荷重変化のパターンを把握して検知する、画期的な技術です。世界で初めて荷重センサー内蔵アクチュエーターを採用した[メーティスシリーズ(KA-94220A)]は、2008年に販売を開始しました。ベッドそのものが患者様の離床を検知してナースステーションに通報するシステムは「離床CATCH」と名付けられ、マット式センサーに代わる新しいシステムとして、多くの病院に採用されました。

検知率(端座位)
  • 98.1%
    離床キャッチ
  • 70.1%
    マット式センサー
検知率(起きあがり)
  • 87.0%
    離床キャッチ
  • 66.0%
    マット式センサー
誤報率(端座位)
  • 2.4%
    離床キャッチ
  • 50.4%
    マット式センサー
誤報率(起きあがり)
  • 3.1%
    離床キャッチ
  • 15.5%
    マット式センサー
終わりのない、飽くなき進化。

終わりのない、飽くなき進化。

「離床CATCH」は患者様がより安全に過ごせるように、そしてスタッフの負担を少しでも減らせるように、
進化を続けています。その後、離床のみならず、患者様の起きあがりも検知できる「離床CATCHⅡ」を開発しました。
起きあがりを判定するためには、単にベッド上の荷重を検知するだけでなく、ベッドの背角度などによって荷重が小刻みに
変化することを考慮する必要があります。そのため無数の荷重パターンを検証して、
起きあがりを判定するアルゴリズムを完成させました。そして2015年に発表した「離床CATCHⅢ」では、
ナースコール通知後に通知機能の再設定操作が不要となり、さらに使い勝手のよいシステムとなりました。
パラマウントベッドの技術者は、自ら現場へ足を運んで調査し、解決すべき課題を見つけて、検証と試作を繰り返します。
その挑戦に、終わりはありません。