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介護
軽度者の自立支援と介護負担軽減に福祉用具が有効
情報誌けあ・ふるVOL.88(2016/7) 掲載

医療・介護ベッド安全普及協議会 事務局
菊地 朗さん

福祉用具貸与等の制度継続を

 医療・介護ベッド安全普及協議会(以下、協議会)は、「福祉用具使用によるヘルパーの労働負担軽減と介護保険における要介護度2の高齢者の自立支援に関する調査研究」を行い、本年3月に報告書を発行しました。この調査研究では、福祉用具が要介護度2の人の自立支援や介護従事者の負担軽減にどう役立つかについて現状を分析し、効果を検証しています。協議会事務局の菊地朗さんに、調査研究の目的や内容について伺いました。

本調査研究を行った背景を教えてください。

 福祉用具は、要介護者の身体機能を最大限に活用し、介護度に応じて自立した生活をサポートするために大切な役割を果たします。しかし、政府は介護保険制度における軽度者に対する福祉用具貸与等の給付について、見直す方針を打ち出しています。また財政制度等審議会では、「要支援~要介護度2」の要介護者に対する福祉用具貸与等の給付を「原則自己負担」とすべきであるとの提言がなされました。
 自己負担になることで必要な福祉用具の利用が減れば、要介護者が現在維持している自立度を低下させる恐れがあります。また、そのことでより手厚い介護が必要になり、財政面での介護保険支出を逆に増加させかねません。介護従事者の労働負担も増え、これが離職につながりサービス提供に困難をきたす可能性もあります。そこで協議会では、要介護度2の高齢者への福祉用具の有効性を明らかにし、その有効性について広く理解を求めるために、本調査研究を行いました。

福祉用具が役立つ点などについて、具体的にどのような調査を行いましたか。

 調査研究は、産業現場の労働について実証的な調査研究に多くの実績がある公益財団法人大原記念労働科学研究所に委託しました。具体的内容は、介護従事者を対象とした「インタビュー調査」「アンケート調査」および「介護動作と筋負担の試行実験」等です。
 インタビュー調査では、31名の方から「要介護度2の人にとって福祉用具が役立つ事例」を聞き取り、「介護従事者の視点」と「福祉用具別」の2つの観点からまとめました。介護従事者の視点では、福祉用具は腰痛の予防・精神的ストレスの軽減など「介護負担の軽減」や動作時間の短縮など「介護サービスの質の向上」に役立つこと、このような効果を介護従事者が実感することで「介護従事者のやる気の向上」につながっていることがわかりました。
 アンケート調査では、腰痛の有無・疲労度合や福祉用具がどのような場面で役立っているのかなどについて質問し、945の有効回答を得ました。その結果、腰痛があったり、疲労度の高い人のほうが、福祉用具が役立つと答える傾向にありました。また、福祉用具が「介護従事者の負担軽減に役立つ場面」として多かった回答は、「要介護者の自立支援に役立つ場面」としても多く、両者には高い類似性がありました。福祉用具は介護従事者・要介護者双方にとって、望ましい環境を実現しやすいことが明らかになったと考えています。

「介護動作と筋負担の試行実験」はどのようなものでしたか。

 要介護度2の人を想定して起き上がりから立ち上がりまでの介護動作を繰り返し行い、介護者の姿勢分析と心身の負担感調査を実施しました。これは「介護ベッド」「家具ベッド」「布団」のそれぞれのケースで行い、比較・検証しました。
 その結果、介護ベッドは、家具ベッドや布団に比べて介護者の膝や腰に負担のかかる姿勢の発生頻度を下げるとともに、急激な姿勢変化を抑えることがわかりました。また、介護ベッドでの介護動作は腰部への負担が軽く、連続的な作業においても疲れにくい傾向があったほか、ベッドの「背上げ機能」「昇降機能」の活用により、「力みを伴う」場面が極めて少なく、「上体を起こす動作」「立ち上がる動作」のいずれにおいても負担が小さいことが明らかになりました(図)。
 介護ベッドの活用が、要介護度2の方の介護の負担軽減になることが、この検証により裏づけられたと考えています。

調査結果を今後どのように活用していきたいとお考えですか?

 今回の調査結果から明らかになった福祉用具の有効性について広く理解を求めるため、調査報告書は、関係団体や社会保障審議会介護保険部会の委員の先生方に配布させていただきました。また、どなたにでもご覧いただけるよう協議会のホームページに掲載しています。
 介護保険における福祉用具貸与は、自立支援や介護負担軽減に有効であるだけでなく、定期的なモニタリングやメンテナンスなどきめ細かいサービスで、利用者や家族、介護従事者を支えています。福祉用具貸与事業者をはじめ読者の皆様には、福祉用具が役立っていることを再度ご認識いただき、これまで以上に福祉用具の普及を進めていただければと考えています。