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介護
介護ロボットの開発・普及を加速
情報誌けあ・ふるVOL.90(2017/1) 掲載

厚生労働省 老健局 高齢者支援課
福祉用具・住宅改修指導官
介護ロボット開発ロボット開発普及推進官

小林 毅さん

導入目的を明確にして効果的に活用を

 政府が推進する「ロボット新戦略」などを背景に、介護現場へロボット技術の普及を促す動きが加速しています。
厚生労働省と経済産業省が連携し、介護利用における重点分野を設定して開発支援、現場への導入支援事業を進めており、さらに、今年度から介護ロボット開発等加速化事業をスタートさせ、着想・開発段階から上市段階という、現場への導入、実証、普及まで総合的に支援しています。その狙いと今後の取り組みについて、厚生労働省の福祉用具・住宅改修指導官で、介護ロボット開発普及推進官である小林毅さんにうかがいました。

介護ロボットの普及を推進する背景について、お教えください。

 2013 年に閣議決定された日本再興戦略で「ロボット介護機器開発5カ年計画」が策定されました。2015年にはロボット革命実現会議から「ロボット新戦略」がとりまとめられ、各省庁横断でロボット関連事業を推進することが決まりました。
 これらを踏まえ、厚生労働省と経済産業省は連携して、ロボット介護機器の開発・導入を促進していくことを決めました。現在はその重点分野をニーズの高い移乗介助、移動支援、排泄支援、認知症の方の見守り、入浴支援の5 分野8 項目に特定し、支援しています。成果として、動作を支援する装着型のパワーアシストスーツなどが介護現場で使われるようになりました。
 「一億総活躍プラン」においても介護の環境整備が掲げられ、介護離職ゼロなどに向けて介護ロボットの活用促進が盛り込まれています。厚生労働省では、介護人材不足に対応し、介護の質を上げるためにもロボットの普及を促進しています。

今年度から、さらに新たな普及事業が始まっていますね。

 現在、普及事業としての大きな柱は2016年度から始まった「介護ロボット開発等加速化事業」で、以下の3つの事業に分けられます。
 1つ目が「ニーズ・シーズ連携協調のための協議会の設置事業」。この協議会は、開発前の着想段階から介護ロボットの開発の方向性について介護現場と開発企業が協議し、介護現場のニーズを反映した開発の提案内容をとりまとめる役割を持ちます。
 2つ目は「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」です。介護現場のニーズに適した実用性の高い介護ロボットの開発を促進するため、開発中の試作機器についてアドバイスやモニター調査、成果の普及啓発などを行います。
 3つ目が「介護ロボットを活用した介護技術開発支援モデル事業」です。介護ロボットの導入促進には、使用方法の熟知や施設の中で効果的な活用方法を構築することが重要であり、その介護技術を開発するまでを支援するモデル事業を実施します。
 このように、現場の声を聞き取って必要な介護ロボットを着想段階から開発へと支援し、経済産業省の事業での開発を受けて私たち厚生労働省が、現場で実証し、必要に応じて改良、製品化までを支援します。さらに、現場に導入したときに介護方法や勤務形態などがどう変わるのか調べながら介護技術を構築し、成功事例を広めていく。つまり、着想、開発、実証、改良、製品化、普及がうまく回るような事業を実施していこうというのが趣旨です。
 2015 年度の補正予算では「介護ロボットの導入支援事業」が実施されています。介護ロボットには介護従事者の負担を軽減し、就労の環境を整備することも期待されていますので、まず導入を支援しました。また、在宅で生活する高齢者の見守りを支援する介護ロボットについては、市町村を対象にした支援を行いました。

今後の取り組みはいかがでしょうか。

 2016 年4 月から介護保険の給付対象となる福祉用具に、アシスト機能付きの電動制御歩行器が追加されました。電動制御歩行器は、センサーと制御機能という「ロボット機能」を備えています。従来、給付対象の種目の見直しは3 年に1 度でしたが、ロボット新戦略を受けて、迅速に対応することとなりました。
 これまで5 分野で進めてきた開発支援については、現在、経済産業省でコミュニケーション支援ロボットも追加するべきかどうか検討を行っています。また、介護ロボットが現場でどのように使われ、どのような効果があったかを見える化する事業を2016 年度の補正予算で考えています。「実証研究事業」として、これまでの効果も可能な限りより具体化できればと考え、検討中です。
 また、厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、これら実証事業の成果を踏まえたうえで、介護ロボットを活用する事業所に対する介護報酬や人員・設備基準の見直し等を今後検討することについての意見が素案で示されています。

福祉用具のメーカーや貸与事業者にはどのようなことが求められるでしょうか。

 福祉用具は基本的に利用者の身体機能を維持し、能力を引き出すためにあるわけですから、介護ロボットはただ便利で安楽に使えればよいということにはなりません。メーカーには、ロボット技術を何のために導入するのか、開発コンセプトを明確にして活用の道を拓いてほしいと思います。貸与事業者の皆さんは、ロボット技術で付加された機能が利用者にどのようなメリットがあるのかという視点を大切にして適切に評価してほしいと思います。介護ロボットは今後も進化するでしょう。しかし、従来の福祉用具がなくなるわけではありません。利用者にとってどのように使い分けるのが最適か、利用者の自立支援と介護者の負担軽減、そして安全性を判断して適用していくことが大事になると考えています。